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2010/01/24: "でも、ジョイスは読まないだろうなあ。"
今朝の朝日新聞に丸谷才一による「新訳決定版 若い芸術家の肖像(ジェイムス・ジョイス)」の広告が載っていて、「あの難解とされた名作は、こんなにも面白かった」んだそうです。
でも、難解だから名作なんじゃなくて、面白いから名作と呼ばれるんでしょうね。
コピーにつられて、思わずAmazon.co.jpを開きそうになりましたね。
私の手元にも、昭和35年に筑摩書房から出た「若き日の芸術家の肖像」があります。 ペラペラとページをめくってみて、やっぱりAmazonに注文するのは止めました。 いくら丸谷才一の見事な日本語訳でも、あの小説が面白おかしくて、痛快無比に変身する訳がありません。
と言うわけでも無いのですが、最近、「人形のBWH」という彼のエッセー集を読みました。
話題の展開の巧みさは相変わらずで、「わがミシュラン論」なんてのは、その悪文と本の作りの悪さに腹を立てているのかと思ったら、これが実は<すきやばし次郎>に対する批判だったりするんですね。
(ところで、レストランガイドに共通しているあの独特な文体はどこから来ているんだろう? 「仕事がしてある。」といったような、変な表現を使い始めた山本益博辺りが諸悪の根源じゃないか・・・などと疑っているんだけど。)
彼(もちろん山本某じゃありません。)の書評などを読んでいたりすると、「ユリシーズ」だろうが「フィネガンズ・ウェイク」だろうが、「用心棒日月抄」や「剣客商売」と同じくらいお気楽に読み飛ばせそうな気分にさせられちゃいます。
それにしても、この方の博覧強記、知識の広さ、深さにはあきれ果てます。 ま、プロ野球ベイスターズの熱狂的ファンのくせに、このチームの試合をテレビで見てしまうおかげで、どれほど本を読めなかったか・・・などと嘆くような人ですから。
もっとも、私の場合は、いくら読んでも読んだはしから忘れてしまって、少しも蓄積するものがありません。 こんな読書は、時間と本の購入費と、紙資源の無駄のようにも思えるんですが、読んでいるときは結構面白いもんだから、娯楽としてはそれほど悪くはないんじゃないかと思ったりもしています。
でも、ジョイスを読むだけの忍耐力は無いなあ・・・。 それに、ジョイスを面白がるには丸谷才一並みの教養と知識と理解力が必要なんだろうしね。