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2011/10/12: "キノコと虫ばかり食ってます。"
大鍋でイナゴの佃煮を作っています。
妻が捕ってきた1,000匹以上のイナゴです。
長年の経験と、私の研ぎ澄まされた味覚で確立したレシピは門外不出。
地蜂の巣をいただきました。
秋になると、地蜂は山の斜面や土手などの水はけのいいところに穴を掘って巣を作ります。
子供の頃、村の悪ガキたちと一緒に、あちこち刺されながら夢中になって捕ったものです。 フライパンで乾煎りをすると、香ばしくて甘くて、絶好のオヤツだったのですが、大人たちの酒のつまみとして強奪されてしまうこともありました。
ところで、食材としての昆虫や昆虫料理の話はほとんど読んだことがありません。
開高健の「孔雀の舌」にも、石毛直道の「食いしん坊の民俗学」にも、ジェシカ・クーパーの「人類学者のクッキングブック」にも、虫を食う話は出て来ません。
実際には、かなり多くの民族が昆虫を食っているはずなのに、意識的になのか、あるいは無意識になのか、昆虫食は無視される傾向にあるらしい。
唯一、私が読んだ本の中で、かなり詳しく昆虫食を取り上げているのが、マーヴィン・ハリスの「食と文化の謎」(岩波書店)です。
彼によると、イスラエルの昆虫学者フランツ・ボーデンハイマーは、「南極をのぞいたすべての大陸で昆虫を食べる事実を明らかにした。」とのことだし、ヨーロッパ人自身も19世紀辺りまでは昆虫を食うことがあったらしい。
アリストテレスは、「セミは最後の脱皮前のさなぎがもっとも味がよく・・・云々」と言っていて、アリストファネスはバッタを「四つの羽のある鳥」と称して、「アテネの貧しい人々が食べる。」なんてことを書いてるそうです。
現代のヨーロッパ人やアメリカ人が食材としての昆虫をひどく毛嫌いするのは、要するに昆虫やその幼虫が持つイメージの問題なんでしょうね。 現代日本人の大多数だって、イナゴや蜂の子、あるいは蚕のサナギやザザムシなんて見るのも嫌だろうし、食わなくても別に困ることもないし、多分、日本の食文化からも、イナゴや蜂の子は消えて行くんでしょうね。
それはそれとして、東京に居る友人、知人たちは、どうしてあんなにも毎日毎日、ひどく旨そうなものばかり食ってるんだろう?
牛の頬肉乗せバターライスだの、木耳卵丼だの、うな重だのって許せないね。