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2010/08/11: "異文化の食には拒否反応"
連日の酷暑に食欲も失せて、何とはなしに旨そうな話の本ばかりを読んでいます。
Marvin Harrisの「GOOD TO EAT - Riddles of Food and Culture」という本に、コロンビア大学の文化人類学教室で、日本の缶詰のイナゴを学生たちに食わせて大問題になったなんて話が出ていました。 イナゴを食ったことが原因で病気になった学生まで居たそうです。
最近、「The Cove」という映画がずいぶんと話題になっていますが、異文化の食材ってのは時にはひどくグロテスクなものに見えたり、野蛮で残酷な行為に思えたりするもんなんでしょうね。
昔、アメリカの本社から来ていたコンピュータプログラムの開発エンジニアと、虎ノ門辺りの縄暖簾で酒を飲んでいると、そのエンジニアが「ホテルのテレビを見ていたら、若い日本人の女の子が、大きな皿に乗った魚の頭を食っていて、しかも目玉まで美味しそうに口に入れていたけど、日本ではあんなグロテスクなものを普通の女の子でも食うのか?」と言うんです。
多分、鯛のカブト煮でも食っていたんでしょうけど、彼のアメリカ人にとってはとてもショッキングな光景だったようです。
で、私たちが居た飲み屋には馬刺しも鯨刺しも有ったので、よほどそのガイジンに知らん顔して食わせてやろうかと思ったのですが、あまりにも刺激が強そうなので諦めたのを覚えています。
30年ほど昔に、ニュージーランド・ラムのプロモーションをしたことがあります。
当時の日本では、ラム肉なんてほとんど知られて居なくて、そのころ評判になっていたフランス料理の一流シェフたちに頼んで、婦人雑誌の広告に出てもらったり、料理教室の講師をしてもらったりしたのですが、ラム肉が子羊の肉だと言うことを知ると、ほとんどの女性たちの反応は「え〜っ! 可哀そう!」というものでしたね。
ところが、3、4年前に新宿で焼肉屋へ行ったら、どの店も若い女性の行列で、30分待ちだの1時間待ちだのと言われました。
事情が分からずに、一緒に居た友人たちに聞いたら、なんとラム肉ブームで、ジンギスカンが大流行だと言うではありませんか。
あの可哀そうな子羊の肉を、行列を作ってまで食おうとしていたんですね。
そんなことから思うと、あと20年もすればアメリカのアカデミー賞の審査員たちも、イルカの肉はヘルシーだから・・・などと言って、ハリウッドやニューヨークのイルカ肉専門レストランに大挙して押しかけているに違いありません。