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2008/12/16: "狸の旬は今月いっぱい"
今朝、我が家の犬が林の中で狸を追い詰めました。
「カーッ!カーッ!」と犬を威嚇している声がするので見に行ったら、痩せた狸が太いホウの木の根元で牙をむき出して怒っていました。 我が家の犬にとっては、狸は獲物でも何でもなくてただの遊び相手らしく、嬉しそうに尻尾を振りながら狸の顔を覗き込んでいます。 狸こそいい迷惑です。
ちょうど欣也さんが通りかかったので、朝の挨拶をしながら狸の話をしたら「デカかったか?」と聞きます。
「いや、それほど大きくもなかったし、ひどく痩せてたよ。」と答えたら、「んだが〜。 食っても旨ぐねえな。」と残念そうに通り過ぎました。 先日も欣也さんちの雌犬が小さな狸を川岸まで追い詰めて大騒ぎをしていました。
その時も欣也さんは「いまちっとでっけえと食っても旨いんだけどなぁ。」と残念そうでした。
もう30年くらいも前に、浦和に住んでいた友人の町田クンが「狸を食わせるから・・・。」と言うんで、わざわざ六本木から出かけていったことがあります。 季節は忘れましたが、少なくとも寒い時期ではなかったと思います。
町田氏のアトリエで出されたのは、野菜がたっぷりと入った醤油仕立ての狸汁でしたが、あまりの悪臭に箸をつけることができませんでした。 ホストの町田氏は、「臭いなんか気にならないだろ。 旨いよ。」などと言いながら、他にも呼んでいた仲間たちにもしきりに勧めていましたが、彼らも逃げ回っていたような気がします。
それ以来、私は狸は悪臭がひどくて、とてもとても食えないもの、と思い込んでいるので、欣也さんに「臭くないんですか?」と聞いたら、「いや、今の狸は臭ぐね。」とのこと。 そう言えば、大井沢に越してきてから、何人もの人に「狸は1月にはいると臭くてダメだけど、12月いっぱいは臭いが無くて旨い。」と聞かされたことを思い出しました。
とは言われても、やっぱり狸を試す気にはなれませんね。 それに、私の頭の中では食材としての狸を完全に拒否しています。
それにしても大井沢の皆さんのグルマン振り、グルメ振り、ジビエ好みには驚かされます。 中国の食通が好むという彼のハクビシンだって食うらしいし、アナグマなんて絶品だと言います。 今はもう食べませんが、古老たちの話によればカモシカも割合ポピュラーな味だったようで、「旨い。」と言う人も居れば「山羊肉やマトンの様な臭いがして旨くない。」と言う人も居ます。 好みの問題なんでしょうね。
私がここに来て味わった地元のジビエと言えば熊と兎くらいのものですが、ま、私の好みから言えば、普通に市販されている普通の肉類の方がはるかに美味しいですね。
でも、雪が締まった春先にカンジキやスキーを履いて山に入り、鉄砲で兎を撃ってくるのは楽しみでもあり、昔ながらの季節の味でもあり、そしてご馳走なんでしょう。 標津の稲葉さんだってヒグマの肉には目が無いようで、「次は脂身の多いところをくれ。」と、今にもよだれが垂れそうな表情をしていましたし、やはりよそ者には理解できないその土地それぞれの美味が存在するんでしょう。
それもまた文化ですね。