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2009/02/02: "本を貸すのを止めた理由"
日曜日の朝日新聞に、俳優の山崎努氏が丸谷才一の「思考のレッスン」について書いていました。
彼が書いていた内容は、私にとってはどうでもいいことなんですが、ふと苦い記憶がよみがえりました。
何年か前に、ある人と「最近読んで面白かった本」の話をしていたのですが、私はちょうど発行されたばかりの「思考のレッスン」に触れました。
相手は、是非ともその本を読みたい、と言うので、断ることも出来ずに貸してしまいました。
既に読み終えた本ですし、急いで返して貰う理由も無かったのでしばらくそのままにしていたのですが、2ヶ月経っても、3ヶ月が過ぎても返してくれる気配がありません。
そろそろ返してくれるように話すと、「知り合いに貸してある。」と言うんです。 しかも相手は「読んでもよく分からなかったから、最初の1、2ページで諦めた。」なんてことまで言うんです。
で、その本はとうとう戻って来ませんでしたね。 もっとも見ず知らずの人がトイレに持ち込んで読んだかも知れないような本なんて返して貰っても嬉しくも何ともないので、そのまま催促もしませんでした。
私の手元に「Rare and Unusual Fly Tying Materials: A Natural History」と言うとても大切にしている本があります。
我が家を訪ねてきた釣りの知り合いにその本を見せたら、なんと指を舐めながらページをめくりました。
多分、その時の私の顔は引きつっていたと思いますね。 それほど親しい間柄でもなかったので、その場で彼から本をひったくることも出来ず、ずいぶんイライラ、ハラハラしたものです。
他人に貸した本の多くは行方不明になったままです。
手元に戻って来た本の多くは腰巻が無くなっていたり、汚れていたり、表紙を折られていたり、中にはボールペンやマーカーで印を付けられたりしたものさえもあります。
私は本が好きです。 好きな本は本当に好きで、かなり大切に扱います。 子供の頃からそうでした。 家が貧しくて、なかなか本を買ってもらえなかったこともひとつの理由になっているかも知れません。
私にとっての本は、単なる娯楽や情報を得るためのメディアではなくて、それ以上の何か特別な存在になっています。
例えば、Hardyのアンティーク・リールよりも、それらを紹介している「Hardy Brothers The Masters The Men & Their Reels」(限定350部中のNo.21)の方が大切なようにも思っています。 リールは誰かに使って貰ってもいいけど、この本を誰かに貸すなんてことはとても考えられません。
とまあ、そんな訳で、私はもうずいぶん前から誰かに自分の本を貸す、ということを(原則として)止めています。
貸すよりも、不要な本は上げてしまうか捨てることにしています。