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2004/11/26: "IT、そしてボジョレ・ヌーヴォ"
むか〜し、私がまだ30才だった頃、ワインブームと言うものがありました。
その頃のTVCMの雰囲気は「金曜日にはバゲット、カマンベール、そしてワインを買って、南青山のワンルームマンションで東京タワーのイルミネーションを見ながらゆったりしよう。」みたいなものでした。
東京で生活をしていると、バゲットもカマンベールもワインも南青山のマンションも日常(に近い)生活の中にありました。 広告屋も、その広告屋が作ったCMを見ている連中も、それが日本全国の常識だと思い込んでいました。
しばらくして、何が何だか分からないままにボジョレ・ヌーヴォのお祭り騒ぎになりました。 マスメデイアまでが、日本全国でボジョレ・ヌーヴォが引っ張りだこ状態の様な報道をしました。
でも、ふと冷静になってみると、私の実家近くの福島県郡山市の食料品店ではカマンベールはもちろんのこと、バターさえも買うことができませんでした。 チーズは丸いケースに入った3角のプロセスチーズだけで、しかも古くなってモソモソでした。 パンと言えばヤマザキパンの四角な食パンだけで、バゲットなんて見たこともありません。 甘ったるい葡萄酒はありましたが、ワインと呼べるものはありませんでした。
ボジョレ・ヌーヴォ? そんなものを知っている人なんて一人も居ませんでしたし、今でも居ないでしょう。
ワインブームに引きずられるようにして、チーズブームのようなものが起きたことがあります。
私はまだ広告会社で働いていました。 輸入チーズのキャンペーンを担当した折に、クリエテイヴの担当者たちと議論をしました。 彼らは日本全体国をチーズ市場として掘り起こそう考えました。
私の考えはチーズもワインもパンも、大都会型の商品だと考えていました。
その時の若いクリエイテイヴ・デイレクター(CD)との会話を思い出します。
私:あなたの実家はどこだっけ?
CD:新潟市です。
私:で、あなたのお父さんはチーズを食って、ワインを飲む?
CD:いや、酒と刺身ですね。
私:じゃあ、あなたの広告で、あなたのお父さんはチーズ党、ワイン党になる?
CD:そんなの、絶対に無理ですよ。
パソコン、インターネット、IT、ユビキタス・コンピューテイング・・・などという話題を聞くたびに、チーズやワインの話を思い出します。
デジタル・デイバイド? そんなことを言っているのはIT業界の人たちだけでしょ? 私の住んでいる村では一度も聞いたことがありません。 ここでは、インターネットやITが無くても、誰も困っていません。 デジタル・デイバイドと言われても、「それがどうした?」というだけの話です。 ましてやユビキタス・コンピューテイングやデジタル家電に至っては、「勝手にやれば?」ってなもんです。 家にも車にも鍵を掛けず、燃料は薪かプロパンガス。 トロンもWindowsもLinuxも関係ありません。
IT業界の人たちの議論を聞いていると、あたかも大井沢の人たちにロックフォールチーズを食わせてボジョレ・ヌーヴォを飲ませようとしているかのように聞こえてしょうがありません。 インターネット人口が5,000万人との調査もあるそうですが、実態はどうなんでしょう?