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2009/07/15: "田舎暮らしをしたい人に・・・宮本常一「忘れられた日本人」"

Kiri0715 (75k image)
丸山健二は「田舎暮らしに殺されない法」という本の中で、<「自然が美しい」とは「生活環境が厳しい」と同義である>と書いてますが、たとえ生活環境が厳しくても自然は美しい方が私にとってはいいことです。
要するに厳しくて不便な生活環境を受け入れてしまえば(あるいは、受け入れられるなら)、自然の美しさは生活の大きな喜びであり、癒しになります。
晴れて行く霧を眺めながらの朝食、川風が吹き抜ける食卓での昼食、明りも点けずに開け放った窓から夕暮れ時の風景を見ながらの夕食・・・雨、風、雲、野生の動物たち、雪、山菜、新緑、山桜、野鳥の声、蛍、紅葉、茸・・・。

Books0715 (82k image)
宮本常一の「忘れられた日本人」(岩波文庫 1984)は、明治、大正、そして昭和30年代頃までの日本の農山漁村の暮らしぶりや社会の仕組み、それぞれの時代の気分などを生き生きと伝えていて、極めて面白い本です。
東北の山村に住みながらこの本を読んでいると、ここに書かれていることが1世紀も前のことだとはとても思えなくなります。
少なくとも東北の農山村にはまだまだ古い仕来たりや村の仕組み、人と人との付き合い方、そして昔ながらの「気分」(あるいは気質)のようなものが色濃く残っています。
都会で生まれ育った人たちには想像も理解もできないことなのかも知れませんが、私が生まれ育った福島県の農村でも、この本に出てくるようなことはほとんどが日常的なことだったし、年寄りや親たちから聞かされてきたことばかりです。
多分、現代に住むほとんどの人たちは、例え農山漁村に住んでいてさえも、そんな古い日本の姿が今の社会にも、今の日本人の意識の中にも生き続けているというようなことをすっかり忘れているんでしょうけど、すくなくとも我々の親や祖父母の世代はこの本の中の社会に生きていた訳ですから、我々がその影響を受けていないと言うことは有り得ません。
その古い日本の姿をかろうじて残しているのが東北の農山村なのかもしれません。
よく、都会の人たちが、大井沢に来て都会とは違った「異文化」に触れる・・・というようなことを言います。 しかし、それは明らかに間違いです。 ここには日本の原風景に近いもの、都会にだってごく最近まで残っていた日本の姿がまだ残されているということに過ぎません。 ここの文化が「異文化」である訳がありません。
そういう意味では、この本のタイトルは「忘れられた日本」でもいいような気がします。
田舎で暮らしたいと思っている人が居たら、この宮本常一の著書と丸山健二の本とを合わせて読むことをお勧めします。
どちらも本当のことばかりです。 なによりも凄く面白いです。