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2009/07/24: "心置きなくクサヤを焼いて食う。"
八丈島のクサヤをいただきました。
トビウオのクサヤは八丈島特有のものらしい。
独特の臭いを嫌う人も多いようですが、私にとってはたまらなくいい香りです。 この香りが無ければクサヤではありません。
それなのに、最近のクサヤは香りも干し加減もマイルドで柔らかくなっているような気がします。
とは言ってもクサヤはクサヤで、軽く炙って食べ始めたら止まらなくなってしまいました。
2〜3年前、東京に行った折にどうしてもクサヤが食べたくて、紀ノ国屋、明治屋、ピーコックと探し回ったのですが、どこにも置いてありませんでした。 クサヤなんてどこででも買える、ごく有り触れた干物だとばかり思っていたものですから、とても意外でした。 この頃はスーパーなどでは売らなくなってしまって、ただのお土産品に成り下がってしまったのかも知れません。
マンション住まいの知り合いが、自宅でクサヤを焼いて、隣近所から大顰蹙を買ったなんて話を聞いたことがあります。
もともと関西の人たちは、納豆以上にクサヤを嫌っていたようですが、その傾向が今では東京まで広まって来ているのでしょうか。
あるいは、食べたいんだけども焼いたときの臭いを考えれると、どうしても抵抗があるということなのかも知れません。
そう言えば、クサヤを小さく千切って瓶詰めにしたものを見かけたことがあります。 あれは焼かなくても食える、ということで考えられた商品なんでしょうね。
しかし、クサヤを食う醍醐味は、巨大なムロアジやトビウオを網の上で焼いてあの独特の香りを盛大に立ち昇らせ、家中に充満させ、身をバリバリとむしり食って、着ている物にまで臭いを沁み込ませ、3日間くらいは痕跡が残っているようなところに有る訳で、瓶詰めの小さな切れ端を箸で摘まみながら食ったんじゃ味も楽しみも半減してしまいます。
そのクサヤを堂々と焼いて、心置きなく食えるってことは大井沢のいいところですね。 唯一の気がかりは、臭いを嗅ぎつけた山の動物たちが大挙して押し寄せて来るんじゃないか、ということくらいです。