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2003/09/09: "IT業界言語"
最近読んだ本が宮本武蔵「五輪書」(岩波文庫)だったり、芭蕉「おくのほそ道」(岩波文庫)だったり、司馬遼太郎「春灯雑記」だったり、丸谷才一「輝く日の宮」だったりするものだから、毎週月曜日に届く「Business Computer News」の記事に目を通したりすると、本当に驚きます。
しかも、その記事が割合簡単に、大井沢弁よりははるかに抵抗も無く理解出来てしまうものだから、余計に腹が立ったり情け無くなったりします。
「Business Computer News」の記事で使われている言語は日本語とはとても言えないような言葉なんですが、これが日本のIT業界で日常的に使われている言葉なんでしょう。
例えば、近々「幕張メッセ・日本コンベンションセンター」で開催されるらしい「WPC EXPO 2003」なる催し物の告知記事。
このイベントの今年のテーマは「〜ビジネスが広がる。 生活が変わる。〜実践ユビキタス・ネットワーキング」で、「パソコン、モバイル機器、携帯電話やデジタルカメラなどの身近なハードウエアから、通信インフラの最新動向、IT関連の最先端技術やビジネス・ソリューションまで一望・体感できる場とし注目される。」んだそうです。
上の文章などはまだまだ日本語に近い言葉で、HP(ホームページのことじゃありません。)のパーソナルシステムズ事業統括デスクトップビジネス本部 山下本部長の談話に至ってはどこの国の人が理解する言語なのか判らなくなります。
例えば、「ビジネスの現場では、広いデスクトップ環境での作業に向いているという業種が少なくありません。 例えば経理の方でしたら、スプレッドシートを広く使いたいでしょうし、いつくものウインドウを開いて作業するような仕事もあるでしょう。 デユアルモニタに対応することで、あたかも2つのモニタがひとつのモニタであるように作業ができますので、デスクトップエリアを広く使えます。 これはチップセットに内蔵されたNVIDA GeForce4の画像処理能力のおかげです。 ”d325 SF”は、グラフィックのパフォーマンスに優れたビジネスパソコンです。」
あるいは「部材を考えてみても、ミニタワー、省スペース、ウルトラスリムなどのフォームファクタごとにマザーボードやきょう体のシャーシなどが存在しています・・・。」
同じ記事の中には「デユアルチャネルメモリアクセスというテクノロジー」やら「プライスパフォーマンス」、「カスタマイズ」、「ベンダー」、「ユーザビリテイ」などなどの言葉が散在し、あたかも「英日混交語」。
これに「ユビキタス」などというラテン語まで混じるんじゃ、抵抗無く理解できる連中の方が特殊な存在というべきでしょう。
要するに日本語を知らないから、こんな言葉を書いたりしゃべったりしていてもそれを異常だとは思わないのでしょうけど、それがまた異常です。
Business Computer Newsの同じ号に掲載されている「一太郎13」の広告コピーが効いています。
「この子は、将来、どんな日本語を使っているのだろう。」
日本語は、世界で一番急速に変化している言葉かもしれません。・・・外来語、専門用語、省略語など、次々に新しい「日本語」が生まれてくる。
もしかして、この子は将来、日本語など使っていないんじゃないの?
で、一太郎は「進化を止め」てしまうんですね。
こりゃ、放送禁止用語よりも深刻な問題かも知れないよ。
どうせ一般の人間には興味の無い世界、理解できない分野だと高をくくっているんだろうけど、そのくせ「幅広いユーザーを取り込め!」だの「e-Japan」だの「デジタル・デイバイド」だのとゴタクを並べるんだから、矛盾と言えば矛盾です。
別に腹を立てているわけじゃないし、どうでもいいことなんだけど、かなり滑稽だったものですから、つい・・・。