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2004/06/20: "中学生からの手紙"
と言っても私がもらった手紙の話ではありません。
風邪気味でうつらうつらしながらドナルド・キーンの「日本人の質問」(朝日選書)を読んでいたら、中学2年生から「あなたは日本のことをまだ理解していない。」という手紙をもらった話がでていました。
40年以上も日本文学と日本文化を研究してきた世界屈指の日本学者に対して、「日本のことをまだ理解していない」と言い切ってしまう14歳も可笑しいけど、日本人にはどうもそんな所があるような気がします。
外国人を見れば「納豆を食えますか? 刺身は? 日本をどう思いますか? 日本語は難しいでしょう?・・・」
多分、この中学生も外国人の名前ということだけに反応してしまったんだと思います。
私の義兄(姉の亭主)はアメリカ人なんですが、東京駅で駅員に東海道線の乗り場を日本語で聞いたところ、その駅員は必死に英語で教えようとしたそうです。 駅員の英語が理解できないので、「私は英語が分かりません。」と再度日本語で言うと、彼は「困ったなあ・・・。」と言って頭を抱えていたそうです。 義兄は「こっちが日本語で話しているのに・・・。」と怒っていました。
若いころの私の上司に早稲田大学の大学院で近世日本文学を専攻したアメリカ人が居ました。 彼の場合は「元気盛りは食べ盛り」という広告コピーを「げんきもりはたべもり」などと読んだりしていましたが、日本語での日常会話は教育を受けた日本人に比べても同等かそれ以上のレベルでした。
彼と二人である総合商社の広報課長に会ったときのことですが、課長さんは最初から最後まで流暢とは言えない英語。 アメリカ人は最初から最後まで流暢な日本語。 竹橋にあった商社のビルを出た途端に、私の上司は「とても失礼な人ですね。」と言って課長さんのことをとても怒っていました。
この広報課長さんは別に英会話の練習をしたかった訳ではなくて、無意識に相手がアメリカ人なので日本語は通じにくいだろうと思っただけなんでしょうが、私にもそんな傾向はありますね。
ところで、私は日本のことや日本人のことが分からなくなるとドナルド・キーンの書いたものを読みます。
「日本人の質問」もそうですが、「続 百代の過客」、「日本文学を読む」、「声の残り」・・・日本の中学生には見えない日本が見えて来ます。
彼が書いているフェノロサの話も面白いですね。 当時、日本の骨董品や民具を集めていた外国人のところには連日のように骨董屋が押しかけて、欲しくもない物まで売りつけたそうです。
なんと、京都知恩院の坊主がアメリカ人の伝道師に釣鐘を売りに来たという話もあって、現代の日本人は「日本の美術品や国宝が海外に流出してしまった」などと残念がってるけど、外国人が買わなかったら捨てられていたかもしれないとも書いています。
彼の三島論、谷崎論も面白いですよ。
それはそれとして、最近のガイジンはやばいです。 日本語が分かっているくせに理解できないフリをしたりします。
ある広告会社の国際局長(アメリカ人)が六本木のバーで日本人女性を日本語でくどいているのを目撃したことがあります。 1年以上も仕事で付き合いのあった男なんですが、一度も彼の日本語を聞いたことがありませんでした。