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2007/12/11: "吉兆は何を売ろうとしていたんだろう?"
テラスの下の小さな池には毎日のようにカワガラスが来て餌をあさっています。 用心深い鳥で、カメラを持ってテラスに出るとすぐに逃げてしまうのでなかなか写真が撮れません。 遠目では黒く見えるので「カラス」と呼ばれるのでしょうが、よく見れば濃い茶色の鳥です。 餌を追って水中を泳ぐ姿は、羽毛に含んだ空気のせいで全身が銀色に光って見えます。
今朝も船場吉兆のニュース。
賞味、消費期限の改ざんは論外にしても、牛肉の産地偽装はあまりにも馬鹿らし過ぎて理解に苦しみます。
「吉兆」という料亭は何を売ろうとしていたんだろう?
料亭である以上、味を売るのが商売だと思うんだけど、今の「吉兆」は食材の産地やブランドに頼らなければならないほど味に自信を失っていると言うことなんだろうか。
「騙された。」と言って怒っている客は客で、「吉兆」の何を買っていたんだろう? この店の味ではなくて、ここで売っている但馬牛を買っていたんだろうか。 店も客も、何かを勘違いしているような気がしてなりません。
昔、友人が案内してくれた青山の鮨屋でひどく腹立たしい経験をしたことがあります。
鮨を握ってくれる板前が、聞きもしないのにいちいちネタの産地をいいながら客の前に出すんです。 海老、鮪、鰈、平目、烏賊、蛸、穴子・・・全て、「常磐沖の**でございます。」 「明石のxxでございます。」
多分、カッパ巻きの胡瓜の産地まで言ってたんじゃないかなあ。
すっかりうんざりしてしまって、わずらわしくて鬱陶しくて、終いにはいらいらして腹が立ってとても食ったような気がしなくなって、思わず目の前の平目の握りを板前に叩きつけたくなりました。 友人のおごりじゃなかったらお茶くらいはぶっかけていたと思いますね。
あの鮨屋も「船場吉兆」と同様に、鮨の味ではなくてネタの産地を売っていたんでしょうね。 で、この青山の鮨屋はひどく繁盛していて、予約を入れていたにも関わらず30分以上も待たされるほどでした。 客の方は、ここの鮨が旨いから来ていたんじゃなくて、多分、明石の蛸や関の鯖、大間の鮪が食いたかっただけなんでしょう。
もっとも、ミナミマグロを「大間の黒鮪でございます。」って出されたって分かりゃしないけどね。 但馬牛でもオージービーフでも味噌漬けにでもしちゃったら区別がつかないんじゃない? 要するに食材の産地がどこだろうと、高い金を払うだけの味ならそれでいいんだと思うけどなあ。
売っている方も、買っている方も「味」という目に見えないものを商品にしているというところに不安がある訳で、「たかがカッパ巻きで何でこんなに高いんだ?」と言われるのが怖くて「米は魚沼のコシヒカリで、胡瓜は茨城**さんの有機無農薬栽培でございます。」ってことになっちゃうんですね。
実はコンピュータやソフトウェアの商売も似たようなもんで、何もハードやCDを高く売りつけているわけじゃなくてそれらが提供するサービスを買って貰っているに過ぎないんだけど、ITビジネスがサービス業だと思っている人もあまり多いとは思えません。